生きてる方がマシ!<その8>
小百合ママが“軽いんじゃないの?”と言ってしまった黒縄(こくじょう)地獄の本当の姿を「待ってました!」とばかりにニナスが話し始めた。
・・・生きてる方がマシ!<その7>・・・のつづき
黒縄(こくじょう)地獄
「黒縄地獄」は、八熱地獄の2番目なのね。
八熱地獄は、順に (1) 等活地獄、 (2) 黒縄地獄、 (3) 衆合(しゅうごう)地獄、 (4) 叫喚地獄、 (5) 大叫喚地獄、 (6) 焦熱地獄 / 炎熱地獄、 (7) 大焦熱地獄 / 大炎熱地獄、 (8) 阿鼻地獄 / 無間地獄で軽い方から段々厳しくなるように構成されている。
「黒縄地獄」は、殺生のうえに偸盗(ちゅうとう)といって盗みを重ねた者が堕ちると説かれている。
分かり易く言うと、地下1階の等活地獄は「殺し」だけだったけど、地下2階のここに落ちてくるのは、「殺し+盗み」つまりは「強盗殺人犯」になるのね。
等活地獄の下だから地獄ビルの地下2階って感じで、縦横の広さは等活地獄と同じでやたら広いわけ(以下、大焦熱地獄まで広さは共通)。
黒縄(こくじょう)というのは、木材などに直線をひくための大工道具のこと。
獄卒は罪人を熱く焼けた鉄の地面に伏し倒し、同じく熱く焼けた黒縄で身体を鞭うちのね、つまりは罪人の体に何百、何千本もの線がひかれるのがポイントよ。
そこで登場するのが、これまた熱く焼けた鋸(のこぎり)よ。
刃先が真っ赤に燃えてて、陽炎が立つくらいの鋸よ。
2人の獄卒たちは、罪人の体についた黒縄の線跡にそって、鋸刃をあてて、一呼吸置くと思いっきり挽き始めるのよ。
「げぇー!」
黒縄(こくじょう)の線上に、真っ赤な血が噴出して、赤黒く鋸刃が染まっていくのね。
お察しくださ~い。
「おぇ~」・・・と唸った拍子に、私は箸の先から赤黒いキムチを落とした。
「ベチャッ」と鳴ってテーブルのガラスに張り付いたキムチを一瞥してニナスは続けた。
想像通りこの時の痛みは耐えがたきもので、最初は痛みで気絶しちゃうわけ。
待ってましたと2人の獄卒たちは、桶の水をかけるわ、平手で殴るわ。傷口をえぐったりするのよ。
あまりの痛みで、眼が覚めるのね。
恐怖で引き攣った罪人の耳元で、獄卒が言うのよ。
「やっぱ、痛い~かぁ?」・・・「これからだぞぉ~」
「お前のやって来たことの報いだからなぁ~」
ニナスは、ここぞとばかりに小百合ママの耳元で、呟いている。
小百合ママは、両手で耳を塞いでいる。
「でも、不思議なんだなぁ~」
ほんと人間って凄いんだなぁ~。
こんな酷い目にあってるのに、だんだん身体が慣れてきて、其のうち気絶しなくなるんだ。
気絶する寸前の痛み・苦しみが限りなく続くって仕組みよ。
ドンだけ苦しくっても、気が狂いそうでも、いずれは慣れてくるんだなぁ~。
鬼も分かってらっしゃって、罪人が慣れてしまう前に、次のアトラクションに移るんだよね!
周りを見渡すと、左右に大きな鉄の山がある。
山の上に鉄の幢(はたほこ)を立て、鉄の縄が張ってあり、罪人に真っ赤に焼けた鉄の塊を背負わせて、縄の上を渡らせるっていうステージに移行するわけよ。
「これでもか!これでもか!」といたぶるのね。
当然のように罪人は縄から落ちて「ぐしゃっ」と赤く焼けた鉄の床にはりつくのよ。
場所によっては鉄のルツボの中に突き落とされて煮られるのね。
違った痛み・苦しみなんで、ハンパじゃないのよ。
「・・・」
他にも黒縄地獄付属の小地獄があってね・・・。
微妙に罪の種類によって、そっちがメインの「罪人」もいるわけ。
例えば、「等喚受苦処(とうかんじゅくしょ)」は、「殺し+盗み」に加えて、ウソの教えを説いた者と投身自殺をした者が送られる。
燃える黒縄でしばられたまま崖の下に落とされ、崖の下には無数の刀と炎が待ちかまえている。
真面目に働かずにウソの教えを説いた者って言うんだから、今の時代だとネットの掲示板で誹謗中傷なんかを繰り返している人はヤバイと思うよ!・・・そういう人が行きそうだもの。
更には、「畏鷲処(いじゅしょ)」なんてのもあって、人の食べ物を奪い飢え死にさせた人が落ちるところなんだな。
地面から高温過ぎて水色の炎が出ていて、そこらの草は鉄のトゲになってるわけ。
ここでも鬼が大活躍ですよ。
金棒は勿論、刀や槍、弓などで責めながら追い回すってぇ仕組み。
鬼がたっぷりと時間をかけて、なぶり殺しにするんだと。
地獄だからねぇ~。中途半端な事はしないのよ。
「・・・」
他にも趣向を凝らしたアトラクションがいっぱいあって・・・。
「・・・もう、いいわ!」耳を塞いだままママが叫んだ。
口元にニヒルな笑みを浮かべてニナスが答えた。
「じゃあ、一旦まとめて黒縄地獄は終りにしましょう。」
ここでの罪人は、耐え難い痛みを充分に味わった後、燃えたり溶けたりして消えてしまう。
ところが、他の地獄と同じように何度も生き返り、最初から黒縄地獄のアトラクションが繰り返されるのね。
痛みに麻痺して、耐えられるように成るのに500年から1000年かかる。
何も感じなくなったら、生まれ変わりのチャンスが訪れるんだ。
この苦しみは、第1地獄の「等活地獄」の苦しみの10倍であるが、最初に行くはずだった第8地獄の「阿鼻地獄 / 無間地獄」の100万分の1の苦しみに過ぎない。
今回の減刑は、ほとんどありえない位の情状酌量だ。
つまりは、ちぢこまっていた男の減刑は、かなりのレベルでなされた事になる。
****************************
「何それ!黒縄地獄って、ぜんぜん軽くないじゃない?」
「何が減刑よ!・・・1000年も耐えるのよ。」
“だ・か・ら・最初から、地獄だって言ってるでしょ!”・・・っと、思っても口に出す者はいない。
・・・生きてる方がマシ!<その9>につづく。
・・・生きてる方がマシ!<その7>・・・のつづき
黒縄(こくじょう)地獄
「黒縄地獄」は、八熱地獄の2番目なのね。
八熱地獄は、順に (1) 等活地獄、 (2) 黒縄地獄、 (3) 衆合(しゅうごう)地獄、 (4) 叫喚地獄、 (5) 大叫喚地獄、 (6) 焦熱地獄 / 炎熱地獄、 (7) 大焦熱地獄 / 大炎熱地獄、 (8) 阿鼻地獄 / 無間地獄で軽い方から段々厳しくなるように構成されている。
「黒縄地獄」は、殺生のうえに偸盗(ちゅうとう)といって盗みを重ねた者が堕ちると説かれている。
分かり易く言うと、地下1階の等活地獄は「殺し」だけだったけど、地下2階のここに落ちてくるのは、「殺し+盗み」つまりは「強盗殺人犯」になるのね。
等活地獄の下だから地獄ビルの地下2階って感じで、縦横の広さは等活地獄と同じでやたら広いわけ(以下、大焦熱地獄まで広さは共通)。
黒縄(こくじょう)というのは、木材などに直線をひくための大工道具のこと。
獄卒は罪人を熱く焼けた鉄の地面に伏し倒し、同じく熱く焼けた黒縄で身体を鞭うちのね、つまりは罪人の体に何百、何千本もの線がひかれるのがポイントよ。
そこで登場するのが、これまた熱く焼けた鋸(のこぎり)よ。
刃先が真っ赤に燃えてて、陽炎が立つくらいの鋸よ。
2人の獄卒たちは、罪人の体についた黒縄の線跡にそって、鋸刃をあてて、一呼吸置くと思いっきり挽き始めるのよ。

「げぇー!」
黒縄(こくじょう)の線上に、真っ赤な血が噴出して、赤黒く鋸刃が染まっていくのね。
お察しくださ~い。
「おぇ~」・・・と唸った拍子に、私は箸の先から赤黒いキムチを落とした。
「ベチャッ」と鳴ってテーブルのガラスに張り付いたキムチを一瞥してニナスは続けた。
想像通りこの時の痛みは耐えがたきもので、最初は痛みで気絶しちゃうわけ。
待ってましたと2人の獄卒たちは、桶の水をかけるわ、平手で殴るわ。傷口をえぐったりするのよ。
あまりの痛みで、眼が覚めるのね。
恐怖で引き攣った罪人の耳元で、獄卒が言うのよ。
「やっぱ、痛い~かぁ?」・・・「これからだぞぉ~」
「お前のやって来たことの報いだからなぁ~」
ニナスは、ここぞとばかりに小百合ママの耳元で、呟いている。
小百合ママは、両手で耳を塞いでいる。
「でも、不思議なんだなぁ~」
ほんと人間って凄いんだなぁ~。
こんな酷い目にあってるのに、だんだん身体が慣れてきて、其のうち気絶しなくなるんだ。
気絶する寸前の痛み・苦しみが限りなく続くって仕組みよ。
ドンだけ苦しくっても、気が狂いそうでも、いずれは慣れてくるんだなぁ~。
鬼も分かってらっしゃって、罪人が慣れてしまう前に、次のアトラクションに移るんだよね!
周りを見渡すと、左右に大きな鉄の山がある。
山の上に鉄の幢(はたほこ)を立て、鉄の縄が張ってあり、罪人に真っ赤に焼けた鉄の塊を背負わせて、縄の上を渡らせるっていうステージに移行するわけよ。
「これでもか!これでもか!」といたぶるのね。
当然のように罪人は縄から落ちて「ぐしゃっ」と赤く焼けた鉄の床にはりつくのよ。
場所によっては鉄のルツボの中に突き落とされて煮られるのね。
違った痛み・苦しみなんで、ハンパじゃないのよ。
「・・・」
他にも黒縄地獄付属の小地獄があってね・・・。
微妙に罪の種類によって、そっちがメインの「罪人」もいるわけ。
例えば、「等喚受苦処(とうかんじゅくしょ)」は、「殺し+盗み」に加えて、ウソの教えを説いた者と投身自殺をした者が送られる。
燃える黒縄でしばられたまま崖の下に落とされ、崖の下には無数の刀と炎が待ちかまえている。
真面目に働かずにウソの教えを説いた者って言うんだから、今の時代だとネットの掲示板で誹謗中傷なんかを繰り返している人はヤバイと思うよ!・・・そういう人が行きそうだもの。
更には、「畏鷲処(いじゅしょ)」なんてのもあって、人の食べ物を奪い飢え死にさせた人が落ちるところなんだな。
地面から高温過ぎて水色の炎が出ていて、そこらの草は鉄のトゲになってるわけ。
ここでも鬼が大活躍ですよ。
金棒は勿論、刀や槍、弓などで責めながら追い回すってぇ仕組み。
鬼がたっぷりと時間をかけて、なぶり殺しにするんだと。
地獄だからねぇ~。中途半端な事はしないのよ。
「・・・」
他にも趣向を凝らしたアトラクションがいっぱいあって・・・。
「・・・もう、いいわ!」耳を塞いだままママが叫んだ。
口元にニヒルな笑みを浮かべてニナスが答えた。
「じゃあ、一旦まとめて黒縄地獄は終りにしましょう。」
ここでの罪人は、耐え難い痛みを充分に味わった後、燃えたり溶けたりして消えてしまう。
ところが、他の地獄と同じように何度も生き返り、最初から黒縄地獄のアトラクションが繰り返されるのね。
痛みに麻痺して、耐えられるように成るのに500年から1000年かかる。
何も感じなくなったら、生まれ変わりのチャンスが訪れるんだ。
この苦しみは、第1地獄の「等活地獄」の苦しみの10倍であるが、最初に行くはずだった第8地獄の「阿鼻地獄 / 無間地獄」の100万分の1の苦しみに過ぎない。
今回の減刑は、ほとんどありえない位の情状酌量だ。
つまりは、ちぢこまっていた男の減刑は、かなりのレベルでなされた事になる。
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「何それ!黒縄地獄って、ぜんぜん軽くないじゃない?」
「何が減刑よ!・・・1000年も耐えるのよ。」
“だ・か・ら・最初から、地獄だって言ってるでしょ!”・・・っと、思っても口に出す者はいない。
・・・生きてる方がマシ!<その9>につづく。
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