信じられない東北〔Ⅷ〕
<キリスト教と謎の組織3>
「幾何学・・・?」 ・・・ はぁ~?
スナック「ロプノール」に、しばしの沈黙が訪れた。
不得意な分野の単語に閉口して、小百合ママがやっと呟いた。
「やっぱ、怪しい組織ね?」
“理解できないモノは、全て怪しいって、変だろ~”・・・思っても口には出せないアビヒコがいた。
<キリスト教と謎の組織>・・・信じられない東北〔Ⅶ〕の続き・・・
「・・・インターネットで読んだんだけど・・・」イゴッティ・ニナスが思わせぶりに話し始めた。
フリーメーソンリーの中で幾何学がなぜ重視されるか?これはイギリスの建築史に由来する。12世紀から16世紀ぐらいの間にイギリスではゴシック建築が隆盛をきわめた。
ゴシック建築にはいくつかの特徴がある。
一つはとんがった尖塔を造る。あれは、神様が上にいるから、なるべく近いところに行きたいという発想だね。
それから2番目の特徴は、丸いドーム型の天井だ。複雑な力学的計算ができないと、これは造れない。
こうしたデザインの建築物を造るには、当時としては、非常に高度な幾何学=ジオメトリーの知識を必要とした訳だ。それを12世紀から16世紀の間、メーソンたちはギルド(組合)を作って、自分たちで囲い込んで、絶対に外に出さなかった。
いわば「秘密主義」だった訳よ。
出せば、自分たちの利益を損ないますからね。しかも、その頃に字を読める人ってほとんどいない訳だ。だから、彼らは口から口へと口伝で秘密の技術を伝えた。その前に「お前、秘密を漏らしたら首を切るぞ」というような脅かしをして、絶対の宣誓をさせて、それで教育していった訳ね。それが、実務的メーソンの時代で400年も続いてたんです。
「秘密結社という性格は、この頃できたと言われている。」
「なるほど!まさに誓約の元に秘伝が管理されてた訳だ。」
巨大なゴシック建築物を完成させる為には、技術面の他に、もう一つ、知識・思想面の資質も必要になる。ギルドの中に若者が入ってくると、技術教育だけでは済まない訳で、当然建物に必要な宗教知識などを含めた人格教育も必要になる。ところが、教える方も教わる方も字が読めない。それで彼らがやった方法は、工具だとか石とか自分の身のまわりのもので、寓意的、寓話的にわかりやすく教えた訳よ。こうした象徴的な教え方によって、人格教育をしようとした。それが今でもメーソンの中に怪しい儀礼として残っている訳なんよ。
そんな実務的メーソンたちの結社に、石工ではない思索的(speculative)メーソンが入ってきたのは、1600年頃と言われてる。その後、思索的メーソンが着々増え、1717年にロンドンで4つのロッジが集まって、最初のグランド・ロッジが出来た時から、近代フリーメーソンリーの歴史が始まったと言われてんだな。
「さすがはニナス君だ!」
“フン!”と顎をしゃくったニナスの後を小岩井さんが続けた。
18世紀の前半のことですから、英国の宗教界がカソリックとプロテスタントの対立、プロテスタントのなかでも英国国教会派と非国教会派とが存在し、混乱していた時期で、人びとが疑心暗鬼になっていたんです。そうした時代を背景として、「宗教的寛容」を説く、フリーメーソンリーが登場した訳で、宗教対立にうんざりしていた様々な宗派の人たちがフリーメーソンリーに入ってきたらしいのです。
フリーメーソンリーでは、抽象的な概念としての「至高の存在」(Suprem Being)に対して尊崇をあらわします。これは儀式や集会の中で必ずやります。しかし、この場合の「至高の存在」とは、キリストでもないし、お釈迦様でもないし、マホメットやアラーの神でもないんですよ。特定の存在ではなく、Aさんは仏教徒なので、心のなかで仏様に向かって祈る。Bさんはキリスト教徒だからGOD(ヤハウェ)に祈ってる。そんな感じです。これが許されるんです。フリーメーソンにおける「至高の存在」とは、いろいろな宗教の最大公約数的な概念なんです。
そんな訳で、メーソンそれぞれの神を崇める事が許される「宗教的寛容」がこの秘密結社の特徴とも言える訳です。 よく使われるシンボルとしてはピラミッドに上に「プロビデンスの目」が描かれているんですが、プロビデンスは「摂理」という意味で、神の全能の目(all-seeing eye of God)を意味する。ここで言う抽象的な神が、「至高の存在」なんです。
「なぁ~るほど、どの宗教の神様でも良いとなりゃ~入会し易いよなぁ~」
「至高の存在かぁ~?」
「ピラミッドにプロビデンスの目!なんなんよ、そりゃ~」
「これから、その辺の謎に迫るわけよ。」
皆の独り言を一蹴し、ママが放った。
「なぁ~んだ。石屋さんだったの~。怖い人達かと思っちゃってたもん・・・」と溜息をついた。
これだけの歴史と謎に彩られた組織を「なぁ~んだ。石屋さんか・・・」で片付けるあんたが一番怖い!
・・・やっぱり口に出せないまま・・・信じられない東北〔Ⅸ〕に続く!
「幾何学・・・?」 ・・・ はぁ~?
スナック「ロプノール」に、しばしの沈黙が訪れた。
不得意な分野の単語に閉口して、小百合ママがやっと呟いた。
「やっぱ、怪しい組織ね?」
“理解できないモノは、全て怪しいって、変だろ~”・・・思っても口には出せないアビヒコがいた。
<キリスト教と謎の組織>・・・信じられない東北〔Ⅶ〕の続き・・・
「・・・インターネットで読んだんだけど・・・」イゴッティ・ニナスが思わせぶりに話し始めた。
フリーメーソンリーの中で幾何学がなぜ重視されるか?これはイギリスの建築史に由来する。12世紀から16世紀ぐらいの間にイギリスではゴシック建築が隆盛をきわめた。
ゴシック建築にはいくつかの特徴がある。
一つはとんがった尖塔を造る。あれは、神様が上にいるから、なるべく近いところに行きたいという発想だね。
それから2番目の特徴は、丸いドーム型の天井だ。複雑な力学的計算ができないと、これは造れない。
こうしたデザインの建築物を造るには、当時としては、非常に高度な幾何学=ジオメトリーの知識を必要とした訳だ。それを12世紀から16世紀の間、メーソンたちはギルド(組合)を作って、自分たちで囲い込んで、絶対に外に出さなかった。
いわば「秘密主義」だった訳よ。
出せば、自分たちの利益を損ないますからね。しかも、その頃に字を読める人ってほとんどいない訳だ。だから、彼らは口から口へと口伝で秘密の技術を伝えた。その前に「お前、秘密を漏らしたら首を切るぞ」というような脅かしをして、絶対の宣誓をさせて、それで教育していった訳ね。それが、実務的メーソンの時代で400年も続いてたんです。
「秘密結社という性格は、この頃できたと言われている。」
「なるほど!まさに誓約の元に秘伝が管理されてた訳だ。」
巨大なゴシック建築物を完成させる為には、技術面の他に、もう一つ、知識・思想面の資質も必要になる。ギルドの中に若者が入ってくると、技術教育だけでは済まない訳で、当然建物に必要な宗教知識などを含めた人格教育も必要になる。ところが、教える方も教わる方も字が読めない。それで彼らがやった方法は、工具だとか石とか自分の身のまわりのもので、寓意的、寓話的にわかりやすく教えた訳よ。こうした象徴的な教え方によって、人格教育をしようとした。それが今でもメーソンの中に怪しい儀礼として残っている訳なんよ。
そんな実務的メーソンたちの結社に、石工ではない思索的(speculative)メーソンが入ってきたのは、1600年頃と言われてる。その後、思索的メーソンが着々増え、1717年にロンドンで4つのロッジが集まって、最初のグランド・ロッジが出来た時から、近代フリーメーソンリーの歴史が始まったと言われてんだな。
「さすがはニナス君だ!」
“フン!”と顎をしゃくったニナスの後を小岩井さんが続けた。
18世紀の前半のことですから、英国の宗教界がカソリックとプロテスタントの対立、プロテスタントのなかでも英国国教会派と非国教会派とが存在し、混乱していた時期で、人びとが疑心暗鬼になっていたんです。そうした時代を背景として、「宗教的寛容」を説く、フリーメーソンリーが登場した訳で、宗教対立にうんざりしていた様々な宗派の人たちがフリーメーソンリーに入ってきたらしいのです。
フリーメーソンリーでは、抽象的な概念としての「至高の存在」(Suprem Being)に対して尊崇をあらわします。これは儀式や集会の中で必ずやります。しかし、この場合の「至高の存在」とは、キリストでもないし、お釈迦様でもないし、マホメットやアラーの神でもないんですよ。特定の存在ではなく、Aさんは仏教徒なので、心のなかで仏様に向かって祈る。Bさんはキリスト教徒だからGOD(ヤハウェ)に祈ってる。そんな感じです。これが許されるんです。フリーメーソンにおける「至高の存在」とは、いろいろな宗教の最大公約数的な概念なんです。
そんな訳で、メーソンそれぞれの神を崇める事が許される「宗教的寛容」がこの秘密結社の特徴とも言える訳です。 よく使われるシンボルとしてはピラミッドに上に「プロビデンスの目」が描かれているんですが、プロビデンスは「摂理」という意味で、神の全能の目(all-seeing eye of God)を意味する。ここで言う抽象的な神が、「至高の存在」なんです。
「なぁ~るほど、どの宗教の神様でも良いとなりゃ~入会し易いよなぁ~」
「至高の存在かぁ~?」
「ピラミッドにプロビデンスの目!なんなんよ、そりゃ~」
「これから、その辺の謎に迫るわけよ。」
皆の独り言を一蹴し、ママが放った。
「なぁ~んだ。石屋さんだったの~。怖い人達かと思っちゃってたもん・・・」と溜息をついた。
これだけの歴史と謎に彩られた組織を「なぁ~んだ。石屋さんか・・・」で片付けるあんたが一番怖い!
・・・やっぱり口に出せないまま・・・信じられない東北〔Ⅸ〕に続く!
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